愛ほっと便り 令和2年8月号 認知症における中核症状と周辺症状
認知症の症状と言えばどのようなものを思い浮かべますか?恐らく多くの方は「もの忘れ」が思い浮かぶのではないかと思います。実際に認知症の初期症状として、同じ話をする、ゴミの回収日を忘れる、同じものを買ってくる、鍵や財布を無くすなどのもの忘れから気づくケースが多いようです。しかし、認知症になると出てくる症状は様々です。今月は認知症の症状を中核症状と周辺症状に分類して以下にまとめます。
中核症状
認知症の直接の原因である「脳の細胞が壊れる」ことで起こる症状
●記憶障害(側頭葉、特に海馬)
短期記憶ほど失われ、長期記憶、手続き記憶は比較的保たれやすい。
●見当識障害
時間(側頭葉)、場所(側頭葉~頭頂葉)、人(側頭葉~後頭葉)と自分の関係を見当する能力の低下。
日付がわからない、迷子になる、家族がわからなくなるなど。
●失行・失認(頭頂葉)
動作のやり方がわからない、目や耳から情報は入っているのに認識できない。
観念失行、着衣失行、構成失行、視覚失認、聴覚失認、触覚失認、相貌失認
●実行機能障害(前頭葉)
計画し実行する能力の低下。
料理など家事ができなくなる、など。
周辺症状(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia: BPSD)
中核症状に加えて、周囲の環境や身近な人々の対応、本人の経験や性格などに起因してみられる症状
①興奮、暴力や暴言 ②抑うつ、不安、無気力 ③徘徊・行方不明
④昼夜逆転・睡眠障害 ⑤不潔行為 ⑥介護への拒否
⑦妄想 ⑧幻覚 ⑨暴飲暴食
周囲からは「問題行動」として捉えられがちですが、本人からすると中核症状がある中で環境に適応しようとしているとも言われます。その行動の理由を理解し適切な対応をとることで本人が穏やかに生活する事が可能となるケースもあります。逆に理解されない事で周辺症状がより悪化し介護が困難となるケースもあります。ただ、周辺症状の難しい点は、適切な対応をしている場合でも周辺症状がなくならないケースもあります。ですので、周辺症状が出ているからと言って、必ずしも適切な対応ができていないというわけではありません。重要なのは、中核症状は脳細胞の損傷であるので改善は難しいですが、周辺行動は周りのアプローチにより変えることができるかもしれない、ということです。認知症の方が周りにおられる場合、見られる症状が中核症状なのか、それとも周辺症状なのか、考えてみるとまた違った角度の見方ができると思います。
株式会社アクティブモア
代表取締役 久德壮一郎