愛ほっと便り 令和2年6月号 2025年以降の日本

戦後以降の日本は、団塊の世代(1947年~1951年生まれ)の方々を中心に動いてきました。1961年に施行された国民皆保険は、高度経済成長期における日本の成長とともに発展してきました。当時の医療保険は今とは違い、高齢者中心ではなく若い労働者を中心に想定して作られた制度でした。というのも1970年、団塊の世代の方々は20~30代の働き盛りであり、1億人の人口を超えた日本において高齢者は700万人と少なく、病院を受診する人数は労働者のほうが多い状況でした。そのため病気、病歴は単一のものがほとんどであり、病気、怪我を早く治す『治療(CURE)』が中心でした。現在40兆円を超える医療費も1970年においては2.1兆円でしたので、その差は明らかです。

そして団塊の世代の方々が50代となって親の介護をしなければならなくなってきた2000年以降、介護保険制度が施行されました。介護保険制度は介護される当事者にとってももちろん重要な制度ではありますが、それ以上に介護をする側にとって有益である制度です。言い換えるとまだ定年退職を迎えていない団塊の世代の方々が、介護離職をしないような労働環境を整えるための制度であったとも言えます。団塊の世代の親世代が前期高齢者である2000年には3.6兆円だった介護給付費も、2018年には10兆円を超えました。

このように、1960年代から2000年にかけては医療制度が発展し、2000年以降は介護保険制度が発展してきました。これは団塊の世代の方々の加齢に伴い、社会制度も変化してきたと言えます。それでは2025年以降の日本はどのような変化を求められていくのでしょうか?

2022年から2026年にかけて、団塊の世代の方々が後期高齢者となります。後期高齢者になると介護認定率が上がり、医療・介護を必要とする方が増えてくると一般的には言われています。しかし、それ以上に増えてくるのは生活に支援が必要な方ではないかと私は考えます。具体的には医療・介護の支援は必要なく大きな問題は抱えていないが、ゴミ出しができない、洗濯を干せない、買い物に行けない、料理が作れないといった生活のちょっとした問題を抱える方たちです。それは配偶者との死別のタイミングで顕著になることが多いと予想されます。配偶者と二人暮らしの高齢世帯が多くなっていますが、自分一人ではできない部分を二人で支え合うことで生活が成立している世帯も多くみられます。このように生活支援が必要になった方々に対して何ができるか、そのキーワードは『地域』です。

現行の介護保険制度において、生活支援は恐らく切り離されると思います。そのため、各市町において生活支援をどのように行っていくのかということが重要である一方で、民間としてもビジネスモデルを確立することができれば、参入する企業も増えてくるのではないかと思います。さらに地域においては『互助』である向こう三軒両隣の精神が重要になってきます。

『医療』→『介護』→『生活』という流れの中で、国に任せるばかりでは追いつきません。2025年以降は生活支援のためにどのように動いていくのか、それぞれの地域の力が試される時代がやってきます。

 

株式会社アクティブモア

代表取締役 久德壮一郎