ヘルパー採用率、過去最低の14.1% ― 介護現場の危機は目前に
先日、介護業界専門紙「シルバー新報」で、「ヘルパー採用率、過去最低の14.1%」という記事が掲載されました。これは、訪問介護事業所が募集をかけても、実際に採用に至った割合が14.1%しかなかったという衝撃的な数字です。過去最低を更新し、現場の人手不足はますます深刻化しています。

背景には、介護職員全体の不足に加え、訪問介護特有の厳しさがあります。利用者宅を訪問するため移動時間が多く、1件ごとの勤務時間が短い場合も多いことから、収入の安定が難しいのが現状です。さらに、高齢のベテランヘルパーの引退が相次ぐ一方で、若年層の新規参入が進まないという構造的な問題もあります。その上、2024年の介護報酬改定において、訪問介護の基本報酬が引き下げられ、このことが訪問介護事業所の休廃業を促進した1つの要因ともなっています。
また、大都市圏と地方では同じ人材不足でも、その性質は全く違います。例えば地方の場合、超高齢化により労働人口は急速に減ってきているため、そもそも介護で働く人数が少なくて採用が難しくなっています。一方で大都市圏の場合だと、介護で働ける資格を持っている者は多いものの、異業種の給与のほうが高くなっているため、あえて研修を受け続けていかなければならない介護の現場では働きたくないという方が増えてきているということです。
このままでは、地域で暮らす高齢者の「住み慣れた自宅で生活したい」という願いが叶わなくなる恐れがあります。介護保険制度の柱の一つである訪問介護が機能不全に陥れば、施設への入所希望者が急増し、介護現場全体に大きな負担がかかります。
私たち事業者としても、待遇改善や働きやすい環境づくりはもちろんのこと、業務の効率化やICT活用などで負担を軽減し、少しでも働き続けやすい仕組みを整える必要があります。また、地域の方々に訪問介護の重要性を知っていただき、「自分の家族や将来のためにも必要な仕事」という理解を広める活動も不可欠です。

ヘルパー不足は、介護業界だけの課題ではありません。地域全体の暮らしを守るための大きなテーマです。今回の数字を、一過性のニュースとして終わらせず、危機感を共有し、行動につなげていきたいと思います。