「絶対にやってはいけない」– 訪問看護の不正請求に揺れる在宅介護の使命

2025年8月22日付の『シルバー新報』では、末期がんや難病患者向け有料老人ホーム「医心館」を展開するアンビスホールディングスにおいて、実態のない訪問看護による診療報酬請求が約6300万円分行われたことが報じられました 。

 特別調査委員会の報告書では、訪問時間の記録不備や法令遵守意識の低さが指摘されており、「組織的な不正でない」という企業側の主張を裏付ける明確な証拠はなかったものの、訪問看護という命に深く関わる職務において、こうした形の請求は“絶対に許されない”行為です

訪問看護は、在宅で療養する高齢者や重症患者の、尊厳ある生活を支える最後の砦の一つ。そこに“実態のない請求”という影が差すことは、介護・医療分野全体の信頼を揺るがす結果につながります。だからこそ、「絶対にやってはいけない」という姿勢を、私たち現場に関わるすべての人が共有すべきでしょう。

なぜこんなことが起きたのか。報告によれば、訪問看護ステーションにおいて、わずかな時間で複数スタッフで訪問したと記録したり、実態と異なる訪問記録を作成した事例が少なくなかったとされます。制度を“形だけ合わせる”ことで診療報酬を請求する行為は、制度の趣旨を歪め、制度そのものへの信頼を失わせます 。

この事件から学ぶべきは、ルールや法令を守ることへの姿勢を日常的に徹底すること。そのためには、訪問看護の記録をしっかり残す仕組みを整え、定期的なチェックを行うことが重要です。さらに、研修や職員への啓発を通じて、法令遵守の意識を高め続ける必要があります。

また、介護・福祉の現場における処遇改善と労働環境の整備も不可欠です。不備の温床となる余裕のなさや過労ギリギリの状況を食い止め、真面目に仕事に向き合える職場こそが、「絶対にやってはいけない」ことを防ぐ土壌になります。

今回の事案は他山の石として、私たちが提供するケアの根幹に立ち返る契機にしていきたいと思います。訪問看護を受ける方の命と安心を守るために、制度を形骸化させないために、「絶対にしてはいけない」ことをしっかりと胸に刻み、日々の業務に臨むことが求められていると強く感じています。