スウェーデンモデルからオランダモデルへ!
介護保険制度の持続性
2000年に介護保険制度が施行されて以降、医療費、介護療養費がどんどん膨れ上がっています。その要因としては様々ありますが、一番の原因は「団塊世代の高齢化」だと思います。団塊世代とは昭和22年から昭和24年の3年間に生まれた方々ですが、2017年の段階で68歳~70歳と高齢になっております。日本の健康寿命が74.9歳、平均寿命が83.7歳(世界保健統計2016)ということを考えると、2023年から急激に増え始め、2030年あたりでピークを迎えると考えられます。厚生労働省としては今でも医療費が膨大している中で、このままの体制で行けば介護保険制度の持続は不可能であると考えているようです。
「高福祉国家」スウェーデンに追いつけ!
この介護保険制度、2025年を境に大きく変わろうとしています。2000年から続いている介護保険制度のモデルは北欧をモデルにしております。北欧のモデルとはどのようなものか?それは「高福祉国家」です。厳密にいうと高負担高福祉国家ですね。スウェーデンを例にとると消費税であれば25%と日本を大きく上回り、国民負担率も58.9%と日本の43.4%を遥かに凌ぎます。しかし、「ゆりかごから墓場まで」というスローガンのもと、教育、医療、介護、福祉と幅広く社会保障を国が支えています。2000年からの日本の介護保険制度はこのモデルを参考に低負担高福祉国家としての歩みを続けてきました。
※夜12時の白夜
「少子高齢化」が進む日本
しかし、ここに来て介護保険の持続が難しくなってきました。低負担での高福祉では財源が足りなくなるのはもちろんのこと、少子高齢化により労働生産人口が激減してきているということも大きな原因のひとつです。スウェーデンの場合、移民を受け入れているため、外国人労働者が増えてきています。そのため、労働生産人口は急激に減らず、高齢化率も緩やかな増加となっています。そのため、移民の受け入れを行っていない日本では、スウェーデンと同じ高福祉国家を目指したとしても、介護保険制度の持続は困難であると言えます。
「インフォーマルファースト」オランダ
そこで今注目されているのがオランダです。皆さんはオランダにどのような印象をお持ちでしょうか?少なくとも高福祉国家というイメージをお持ちの方は少ないのではないかと思います。日本に先駆けて介護保険を導入したオランダは、2007年の財政圧迫の危機に瀕した状態から、介護保険に頼らないインフォーマルな助け合いサービスを主流とする社会に舵を切りました。いわゆる「専門家によるケアは少ないほうが幸せ」ということです。スウェーデンの「高福祉国家」に対して、オランダは「インフォーマルファースト」です。
「共助」「公助」が発達しすぎた日本
インフォーマルサービスとはどのようなものか。日本の場合を考えてみたとき、これまでの介護保険による介護の充実の仕組みは共助、公助の発展によるものだと言えます。つまり共助における民間の介護保険サービスや公助における利用料負担割合の軽減などにより2000年以降の介護を担ってきました。インフォーマルサービスとは共助、公助ではなく、自助、互助のことを言います。自助とはセルフケアに対して自分自身がコントロールしていくということ、そして互助とは家族や友人、近隣住民などがお互いに支えあうということです。つまりオランダのインフォーマルファーストとは自助、互助でまずは介護を行い、それでも手が足らないところに共助、公助をプラスしていくということを言っております。
2025年に向けて
日本は2025年以降大きく介護保険が変わりますが、じつはこのオランダのインフォーマルファーストに代わっていきます。このインフォーマルファーストという言葉は、日本の進めている地域包括ケアシステムといえると私は考えております。これまで日本が追いかけていたスウェーデンの「高福祉国家」から「インフォーマルファースト」への転換期に、現在私たちは立たされています。介護保険事業者としてはこのことを踏まえたビジネス戦略が必要となってきますし、またサービスを受ける本人、家族の心構えも変化が必要いなってきます。当面は2018年の医療・介護の同時改定が控えております。この時に「インフォーマルサービス」への大きな舵切りを行い、2025年に向けて進みだすと思います。乗り遅れないようにしていかなければなりません。
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