愛ほっと便り 令和2年10月号 「慢性痛とは」

7月より愛ほっとでは理学療法士、作業療法士、言語聴覚士を対象とした勉強会を月に一度のペースで行うことになりました。愛ほっと勉強会の担当者は理学療法士の毛利君。勉強会の段取りを主に行ってくれています。そして、8月はその毛利君が講師として「慢性痛とは」というテーマで話してくれました。

 

まず痛みの定義として、「実際に何らかの組織損傷が起こった時、あるいは組織損傷が起こりそうな時、あるいはそのような損傷の際に表現されるような、不快な感覚体験および情動体験」(国際疼痛学会より)とされており、主に感覚的側面、情緒的側面、認知的側面など、多面的に考えていく必要があります。つまり疼痛というのは、損傷部位の細胞組織だけを考えているだけでは解決することができないということです。結局のところ、痛みを感じているのは損傷部位ではなく、脳内の損傷部位を担当する感覚野で侵害刺激の情報を受け取り、その情報に対して脳内で負の感情と組み合わさって、初めて「痛み」として脳が捉えます。

時として、損傷部位が修復しても痛みが残ってしまうケースがあります。そういった場合、いくつかの可能性が考えられますが、例えば前述のケースを考えると、損傷部位は修復したが、痛みを感じる脳内のネットワークはそのまま残ってしまい、「慢性痛」として痛みが残ってしまったと考えられるわけです。

「痛み」において、実際に痛みを感じるときや、他人の痛みを想像するときに働く部位があります。その部位が「前帯状回」という大脳辺縁系の一部にあります。この「前帯状回」の働きは主に痛みに関わるほか、社会的認知にも関わるとされとされており、特に社会的疎外感を感じるときにも働くと言われています。つまり社会的疎外感を感じているケースでは、前帯状回など痛みに関わる部位が活発に働いているため、痛みと相関があるというわけです。このような痛みは「社会的疼痛」と言われ、社会的サポートを手厚くすることで軽減する痛みとも言えます。ストレスにより腰痛が悪化した方の中には、「社会的疼痛」の方が多いのではないかと考えられます。

毎月最終金曜日の開催となります。外部講師や症例検討なども交えながら、今後も毛利君を中心に愛ほっと勉強会を続けていく予定です。